宏潤会のリーダー育成
宏潤会では、毎年リーダーや次世代のリーダーを集めた研修を行い、参加者が自部署のマネジメントについてディスカッションし、これからどう運営していくのかをプレゼンテーションします。その際に使っているフレームワークが「7S」です。
「7S」はコンサルティング会社のマッキンゼー&カンパニーで30年以上前に提唱された、組織の効果的な管理とパフォーマンス向上を目指すためのモデルです。組織には3つのハードな経営資源と4つのソフトな経営資源があるととらえ、それら7つの資源について分析して改善点を見出し、相互に連関させながら、全体像としてその組織に最適な事業戦略を考えていこうというものです。
それぞれの要素とポイント
- Shared Values 組織の価値観:
組織の文化や核となる価値観です。当法人のミッション、ビジョンが反映されています。 - Strategy 戦略:
組織の目標達成のための計画や方針です。市場分析、競合他社との比較、組織の強みと弱みの分析などを行います。 - Structure 組織構造:
組織の構造や階層、部門間の関係を分析し、効率的な意思決定、責任の分担、情報フローの最適化をめざします。 - Systems システム:
組織内の日々の活動や手続きの仕組みです。業務プロセス、ITシステム、評価基準などが含まれ、これらが組織の効率性と業務の効果に影響を与えます。 - Skills 能力:
組織全体、または個々の職員が持つ能力や技術です。職員がどのような専門知識や技術の習得をめざすかを考え、人財開発に力を入れています。 - Staff 人財:
職員の構成や特性です。職場の雰囲気や多様性を感じてください。 - Style スタイル :リーダーシップスタイルや組織の運営のカタチや考え方です。リーダーの行動や意思決定のアプローチが、組織の雰囲気や職員の行動に影響を与えます。当法人のリーダーシップは透明性を大事にしています。信頼に値するリーダーの育成に努めています。
宏潤会各部門のラフ・スケッチ
リーダーたちがそれぞれ学び、ディスカッションを重ね、考え抜いて作った各部門の7Sです。
薬剤部
「患者さんのQOLを改善するため、医療者および患者さんに充分納得していただいた上で、効果的な薬物治療を提供します」――これが薬剤部の理念です。
若いスタッフが多く、変化に柔軟に対応できる組織です。その分、高い専門性を持った薬剤師を増やしていきたいと考えています。
薬剤の効果・副作用のモニタリングなど病棟業務に力を入れています。入院時から退院後まで一貫した薬物治療を提供し、セントラル業務の効率化などを図っています。また、地域の調剤薬局との連携を強化し、退院後も継続的に患者さんの薬物療法に関与しています。
一人ひとりが主体性を持って業務に取り組み、患者さんはもとより、他の医療者からも信頼される薬剤師となるべく、努力しています。
放射線部
放射線技術科のスタッフ一人ひとりが高い専門性を持ち、診療科の医師のニーズに応え、院内多職種と連携してチーム医療に貢献していくことをめざしています。装置の特性を最大限に生かした撮影、適切な治療に繋げるための報告業務、安全性を担保する検証、放射線検査等にかかるテクニカルスキル、そしてコミュニケーションなどのノンテクニカルを磨いています。日常業務、臨床実習、学会活動などさまざまな教育研修を体系化し、切れ目のない人財育成を図っています。
世の中は常に変化しています。その変化を恐れず前に進み続ける組織文化、できない理由ではなく実現するための手段を考える成長マインドを醸成します。
当科のスタッフがIT部門に出向して独自開発した「manabi」は、臨床現場のニーズを具現化した学習ツール。トップダウンと主体性を生かしたボトムアップを融合した風土は、一人ひとりの成長を促します。
臨床検査部
検査部門は、検体検査、輸血、病理診断、超音波診断・生理検査、細菌検査の5つの独立した部門からなります。検査技師は病院、健診センター、クリニックなど法人内施設をまたいで活躍しています。
部門リーダー間の情報共有や部門間連携プログラムによりチームワーク強化を図る一方、管理職・中間職・一般職と各レベルにおいて個々がその「Value」を発揮する対象を明確化し、それを最大化することをめざします。
検体検査部門では、検査をオートメーション化し、検体検査の正確性・安全性の確保を図り、また医師・看護師からのタスクシフトとチームワーク向上を進めています。生理検査部門では、「超音波検査士」の統一管理、法人全体の超音波装置管理、超音波検査手法の統一化など、超音波検査の質の担保に努めています。
リハビリテーション科
高度急性期医療におけるリハビリテーションでは、早期にリハビリを開始して生活能力の改善や低下予防に努め、早期の離床を促すことが求められます。さらに、地域包括の視点で考えれば、「退院後」の生活への想像力が必要です。疾病や身体機能障害から「生活能力の予後」を推定し、介護サービスなどを利用して自宅で生活するための支援もしていきます。セラピストにそのための知識・技術・経験を養ってもらい、仕事のやりがいを感じられる職場づくりをめざしています。
「リハビリテーション・マインド」。リハビリとは元来、患者さんの生活を再建するアプローチです。たとえ身体機能が低下しても人として生き生きと生活できる能力を取り戻すこと、機能のプラス面に着目してそれを最大限に活用することをめざすものです。それを科の風土づくりや教育にも応用しています。
ME室(臨床工学技士部門)
ME室は院内の医療機器の効率的運用とその管理をミッションとしています。しかし、その業務は臨床工学技士の独占ではなく、多くの職種が関わることです。
MEの存在意義はどこにあるか。それはますます高度化する医療機器に対する専門知識と専門スキルを有し、臨床において生命にもかかわる医療機器を安全に運用する専門家集団になることです。そのため教育プログラムを整備し、比較的若いスタッフたちが、それぞれの得意分野を生かし、自由闊達な風土のなか自発的にチームとして機能する組織をめざしています。これらすべては、患者さんに安心・安全な医療を提供するためであるというのがわたしたちの価値観です。
おひさま(大同こども支援センター)
「おひさま」は宏潤会職員が安心して働けるように、そのお子さまを預かる福利厚生施設です。医療従事者を支えているという自負を持って運営しています。保育方針は「こども主体の保育」です。こどもたちの目に見えない能力(意欲・忍耐力・自制心・協調性・リーダーシップ、社会性・想像力・好奇心・思考力など)を養うことが目標です。
こうした保育を実現するため、情報発信については保護者・保育者双方の負担を軽減するICT化を進め、保育士の資質向上も促しています。職員一人ひとりの感情にも配慮し、学びや経験値、協調性、指導力など、そのスキルを最大化できる環境づくりに努めています。
医事3課(だいどうクリニック)
医事課は収益業務の一端を担い、かつ患者さんとの接点も大きい部門です。その責任感とプライドをもって、患者さんや他部門から信頼される存在でありたいと考えています。
最大の使命は、正しく漏れのない算定。そのために、チェックツールやシステムを最大限に活用するとともに、診療報酬および各科の診療に関する、広くかつ深い知識が必要です。それらを磨きながら、診療部門と連携します。だいどうクリニックは5つのフロアに分かれており、フロアごとにリーダーを配置して、若手および中堅スタッフの能力や個性に応じた活躍を促しています。
そして常に患者さん中心の意識とおもてなしの心をもって、患者さんにも診療と算定の内容をわかりやすく説明できる知識とコミュニケーション能力を養うことをめざしています。
卒後研修支援センター
卒後研修支援センターは、若手医師が将来よい医師となるよう手塩にかけて育てます。技術のみでなくメンタル面でのサポートなど最善を尽くしています。そのために指導医と事務スタッフが連携し、研修医・専攻医の一貫教育を通じて、センター自身も地域医療に貢献することをめざしています。
フラットな組織でプロジェクトごとにチームを結成し、医療知識にとどまらず、広報、採用、教育、プログラム管理など多岐にわたる専門スキルを身に着け、発揮します。迅速なニーズ対応のため随時ミーティングを行い、多職種を巻き込んでいきます。前進を止めない、常に続ける姿勢で、価値観の具現化に向けてそれぞれが自己研鑽することが、次世代の医療を担う人財育成につながる仕事だと捉えています。